義足開発臨床モデル(今仙技術研究所・LAPOC/広島国際大学編)
義足の開発(プロトタイプ)臨床モデルについて
なかなかこのような機会を体験・公開できることが少ないので記録として残しておきます
なお、ブログ等の公開にあたり関係者には事前に公開承認をいただいております
臨床モデルってなに?
臨床モデルとは、発売前の製品(今回ご紹介するのは義足の膝継手)を依頼された内容でフィールドテストすることです
もちろん、基本的動作確認や安全性についてはある程度確認してからの実施となるのですが、
今回のように、途中で部品がこわれたり動作不良を起こすこともあります
あとは、動作具合を具体的に開発者や技術者へ”ことば”に変換(トランスレーション)することも重要になってきます
1.臨床メーカーと臨床する部品について
1)製品の概要
今回臨床したのは、今仙技術研究所(LAPOC社)さんと
広島国際大学の月城 慶一 修士(機械工学)・義肢装具士、義肢装具マイスター(ドイツ)
が共同開発した純国産の高機能イールディング膝継手です。
商品名は”油圧イールディング膝 M0790 MCK (Motion Control Knee)”
2)商品の特徴について
① ノーマルモード
② 常時イールディングモード
③ ロックモード
④ サイクリングモード
となっており、サイズからみてもこれだけの機能を詰め込んだ油圧膝はいままで無かったと思います
商品の機能詳細は、下記URLをごらんください
https://www.imasengiken.co.jp/product/lapoc/m0790.html
3)臨床に使用した義足パーツ
今回の臨床時に使用した主な義足のパーツは下記の通りです
・ソケット:NU-Flex SIV Socket + ウィローウッド LLV-2000-L Limblogic
・膝継手:M0790 MCK (Motion Control Knee) プロトタイプ
・足部:Ottobock社 1C60 トリトンフット
2.臨床内容と記録について
上記の特徴の4項目について動作確認や歩行時の違和感等を確認していきました
動画撮影については、すべて”ノーマルモード”で実施したときの画像です
(私自信の歩き方が悪いところもありますがご容赦ください)
1)平地での歩行確認
2)坂道の下りと上りでの歩行確認
自宅近所に写真の様な坂道と階段があり、こちらで数往復して歩行確認を実施しました
最初の1~2歩は杖を使用しましたが、動画の通り杖を使わないで膝継手の油圧イールディングを使用しながら坂道を下る事が出来ました
3)階段下り
最後の方では、急に油圧がぬけて階段を踏み外すというハプニングもありました
イールディング機能を使用した歩行を重点に行っていたため、このあと油圧シリンダーから油漏れを起こしてしまいました
(シリンダー製造メーカーさんいわく”当初の想定以上の荷重をかけられていた事”に驚いていたそうです)
なお、製品化にあたり現在はシリンダー等が改善されています
4)臨床中の膝継手の感想
コンパクトで軽量な膝継手ですが、動画の通りかなりきつい下り坂でもしっかりと安心して体重をかけることができ、階段の下りでも下り坂同様に安心して荷重をかけて交互に降りる事ができました
3.プロトタイプのお披露目と臨床の終焉
1)プロトタイプのお披露目
2019年に開催された、ISPO神戸で臨床モデルとして膝継手のお披露目をしました 撮影日:2019/10/07
開発者の月城 慶一 修士(機械工学)・義肢装具士、義肢装具マイスター(ドイツ)と撮影
2)臨床の終焉
新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響で、 国外の渡航規制や県外越境の規制も発令されてしまい膝継手の調整などで行き来出来なくなりました
いろいろと予定していたイベントでのモデルや、臨床モデルもキャンセルになってしまいました(残念です)
3)最後に
あっけない終焉で寂しさはありましたが、開発の初期段階に参加させていただいたことは光栄でした
いままで、空圧・油圧・電子制御膝継ぎ手を履いて来ましたが、とても魅了的な膝継手がまた世の中にでたことは嬉しいばかりです
最後まで、ご覧になってありがとうございます
この場をお借りして、このような貴重な経験をさせていただきました今仙技術研究所(LAPOC)の関係者の皆様、広島国際大学の月城 慶一先生、P.Oコンセプトの荒木 順司P.O、調整やアドバイスをいただいた皆様、動画や写真を撮影してくれたヨメさんに感謝いたします
(公開日:2023/07/22)
※掲載の内容・動画・画像については無断転載禁止です